トレイルランニングの計測をSPORTidentでやってみた

2021年秋にとあるトレラン大会があり、その計測をirohaori workが引き受けました。
オリエンテーリングで近年使われるようになってきた計測機材をトレイルランニングにも適用することで、国内SPORTident機材保有者の貸出先がもっと増え、お金が回るようになるのではないかと思ったので書きます。

計測機材は保有するだけ損だと思う

まず初めになぜトレイルランニングへの普及を企んでいるのかを簡単に説明すると、国内の計測機材保有者がオリエンテーリング界だけでは機材への投資費用を回収しきれないのではないかと思ったからです。

そもそもステーションは1台約1万円、カードは種類によりますが1枚約5000~8000円ほどです。耐用年数はおよそ3~5年ほど、もっと言えば定期的なメンテナンスが必要になるので、先行投資だけでは保有していられないのが実情です。
国内で貸出を行っている団体をみると、その貸出費用の安さにも驚かされます。
団体によって差異はありますが関東圏での相場は、ステーションは1台400円、カードは1枚約200円ほどです。

1大会で40台のステーション、200枚のカードを使用し、諸々のリーダーや送料などの費用も合算すると、約25000円で一式を借りられます。
実際にこれだけの機材を購入すると、約160万円ほどかかることになるので、点検費をのぞき初期投資をすべて回収するとなると、64大会への貸出が必要になります。
耐用年数を5年と見積もると、年間約13大会への貸出が必要で、月1以上でどこかに貸し出す必要があります。

いくらオリエンテーリング大会が毎週末開かれているからといって、その中でSPORTidentを使用しているのはまだ少なく、さらに関東圏だけで言えば、OCΔ下野・サンスーシ・坂野山遊地図企画がそれぞれ計測機材の貸出をしており、大会の取り合いになるといっても過言ではないと思います。

現時点において、SPORTidentの使用はオリエンテーリングが大半で(もちろん水見色トレイルランニングなど、他のナビゲーションスポーツでも使用されてはいるがごく少数)、計測機材は過剰供給の状態にあると考えています。

そのため、私は計測機材は保有するだけ損だと考えています。
ということで、どうにかして保有するだけ得にしたいので、計測機材の需要を他のところに見出す必要があり、オリエンテーリング内での普及ももちろん大切ですが、本格ロゲイニングがトレイルランニングに繋がりを持つことが大切だと思い、この記事を書きます。

※耐用年数は5年と書きましたが、故障するというよりバッテリー交換がほとんどです。ステーションの電池は自前で交換することができますが、確か国内では流通していなかったと記憶しています。またSiACはSPORTident社での交換(実際はバッテリー交換というよりモノを交換する感じらしい)が必要みたいです。

とあるトレラン大会ではどうやって運用したか

当日の計測方法について

この大会では、各エイドにステーションを配置し、エイド補給とチェックポイント通過記録を行いました。
各エイドには5名ほどのスタッフがおり、カードをステーションにはめ込むことを徹底してもらいました。
チェックポイントは全4か所で、コースによってはエイドステーションが1か所しか無かったりするので、ステーションのレンタル総数は少なく済みます。
クリアチェックは参加者に配布する前に行い、スタートは時刻指定で一斉に行いました。
そのためステーションのレンタル数は10個未満です。

カードはver10を利用しました。タッチフリーを使用しないこと、バッテリーチェックの必要が無いことが採用の理由です。
脱落防止ゴム紐を付けてもらい、参加者には腕への着用をお願いしました。

スタート前にチェックポイントでのステーションへのカードのはめ込みについてデモを行いました。穴にカードを入れるだけなので、特段分かりづらさは聞かれませんでした。

計測チームは私と実行委員会の方の2名体制で行いましたが、トレイルランニングではペナが発生する事案は基本ないに等しいので、リーダーにカードを差し込んで読み取るだけで終えられたので、このあたりの感触は良かったように思います。
ただし事前のデータ作成やステーション設定などは専門性の高い部分があり、プロ計測人員は必要であるという認識です。

Mulka2クラウドを使用し、計時速報を行ったり、ディスプレイでの速報表示を行いました。これも好評でした。

やりたかったけど実現しなかったこと

チェックポイントを全てラジコンにする

チェックポイントが少なかったので、いまどの地点をどのペアが通過したのかをリアルタイムで確認できるように、全チェックポイントをラジオコントロールにしたかったです。
ただプレ大会だったのでそこまでの本格性は要求には合わず、またより専門性の高い部分となるので今回は見送りました。
また前日のエイド設置確認で、現地に電波が入らず、そもそもラジコンができない状態であることが分かりました。

ただこういったことも出来ますよというお話をしたところ、おもしろそうだという意見は聞かれたのでチャレンジしてみたいとは思います。
※国内の機材だと足りないかもですね。

フィニッシュ時の自動計測

フィニッシュをラジコンにして、ゴールした瞬間に計測できるようにしたかったです。
ただICSや代表選考会で一部上手くいかない事象があったので見送りました。

マラソン大会ではゴールラインを踏むと計測できるシステムが陸上連盟公認であるらしく、それをやりたかった形になります。
カード回収はレーン配置でどうにでもなりますし、完走賞自動印刷を連携させることで、フィニッシュ後の流れで参加者への対応全てが行えるのではないかと思います。
計測の簡易化・裏業務化を進めることで、トレランならではのエンタメ性をもっと強く押し出せるのではないかと思いました。

トレラン大会に需要はあるか

あります。
計測機材はもちろん計測人員の需要も絶対にあると思います。

オリエンテーリング界にいると「出来て当たり前」に思えることが、ロゲイニングやトレイルランニングでは通用しません。ハッキリ言わせてもらいますが、そこらへんの一般ランナーが数百人規模の大会を数人で開いているのは異常です。
なぜオリエンテーリングでこんなことが出来るのかというと、参加者もプロだからです。
オリエンテーリングが分かっている人しかいないから運営も数人で出来る。分かっているから競技者と運営者を両立できる。

トレイルランニングでは一般ランナーが多いです。だから最大限のケアが必要で、そのために運営人員が必要になります。なので専門性をもった部門は委託できると楽なのだと思います。

また今回は計測機材に関する記事だったので、そこに言及しますが、計測人員に需要があるので、計測機材にも需要はあります。簡単に言えば、計測を委託されれば使う機材はコチラ任せといっても過言ではないので、そこでSPORTidentを採用すればいいのです。
前述した通り、現時点ではSPORTidentのレンタル費用は相当安いです。マラソン大会などで使用されている機材を使うより、遥かにコストを抑えられます。
もちろんチップの使い捨てなど真似できない部分はありますが、数百人規模のイベントであれば耐えられると思いますし、費用対効果は抜群だと思います。
(それもMulka2のおかげなところが大部分を占めていますが…)

結論を一言でまとめますと、一緒にトレラン計測の営業をしませんか?